11.22.2017

更新情報

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★2017年11月22日 全卓樹さん「南國科學通信」第2回 世界の中心にすまう闇を更新しました! 

★2017年11月22日 仲谷正史+傳田光洋+阿部公彦「触感 × 皮膚 × 文学 「触れること」をめぐる冒険」を公開しました! 

2017年11月8日 全卓樹さん「南國科學通信」第1回を更新しました! 

末井昭「聖書と生活」第1回 世間がひっくり返る 第2回 他者の中に自己を見る 

加藤陽子さん「戦争が平場に降りてきた時代を生きる」フェア

岸政彦『断片的なものの社会学』特設ページ 

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おしらせ
・安東量子+ジャック・ロシャール「渡し舟の上で――現存被曝状況から、現存被曝状況へ」 第2回
・梶谷懐「現代中国――現在と過去のあいだ」第13回

上記の2つの連載は、下記のサイトに移行しました。ひきつづき、下記のサイトにて、お楽しみください。
「路上の人」http://editionhomoviator.blogspot.jp/

-----> これまでの連載のもくじはこちらです。

南国科学通信 第2回 世界の中心にすまう闇

全卓樹
第2回 世界の中心にすまう闇

高知工科大学で理論物理学の研究をしている全卓樹さんに、自然界の様々な階層を旅する科学エッセイを連載していただきます。月に二度、十五分だけ日常を離れ、自然の世界をのぞいてみませんか?(編集部)


世界の中心には巨大な暗闇がある。

高知大物理学科の飯田けい教授の講演はこのように始まった。

宇宙の中心はどこであろうか。実はこの質問には答えがない。宇宙は、より多次元の空間にめ込まれた、両端がつながった閉じた空間だからである。ちょうど地球の表面の二次元世界に生きる生物にとって、地表のどの地点が中心かという質問が無意味なように。

昼空には輝く太陽がある。コペルニクス以来よく知られている通り、この太陽が、地球や金星、火星を含む太陽系全体の中心である。では夜の星空の世界の中心はどこにあるのだろうか。目に見える星のほぼすべては我々も属している銀河、すなわち「天の川銀河」の構成員である。天の川銀河の中心こそが、さしあたって我々の目にする世界の中心だと考えてよいだろう。

初夏の深夜の天頂にかかる天の川、これは円盤状の銀河を内側から見た様子にほかならない。中天の白鳥座が身をひたすあたりからたどって、天の川が南の地平線に落ちる少し手前、真赤なさそり座のアンタレスのとなり、射手いて座でひときわ明るくなっているあたり、そこに天の川銀河の中心がある。


Elijah Hinsdale Burritt
"The Constellations (July, August, September)"
1856
wikimedia commons



銀河を外から見た想像図などでは、薄い円盤状の周辺部にくらべて、銀河の中心はひときわ明るいミカン状の形に見えるが、我々の空にはそのようなものは見当たらない。むしろ中心付近で天の川はけずり取られたように暗くなっている。その理由は暗黒星雲と言って、光をあまり通さない暗いガスが、我々の太陽系と銀河中心のあいだに横たわっているからである。我々の世界の中心である「銀河中心」は長いあいだ、人間の視野のおよばない空白の世界であった。

赤外線天文学そしてX線天文学の発展で、その状況が近年一変した。可視光より波長の長い赤外線や、ずっと波長の短いX線は、暗黒星雲を突き抜けてくるからである。

鼎談:「触れること」をめぐる冒険


触感 × 皮膚 × 文学

「触れること」をめぐる冒険


仲谷正史+傳田光洋+阿部公彦


文学にも「感触」を感じる? 皮膚感覚がパーソナリティと結びつく? 文学の触覚から、触覚の文学へ。『触楽入門』の刊行を記念して開催したトークイベント(2016年3月15日、青山ブックセンター本店)をもとに、『早稲田文学』2016年夏号に掲載された鼎談を、同誌のご厚意で公開いたします。(編集部)

仲谷   『触楽入門』の著者の仲谷と申します。僕は触覚の神経科学の研究をしていまして、触ることに新しい価値を与えられないか、触る文化みたいなものが作れないかと考えて、二〇〇七年に「テクタイル」という活動を立ち上げました。新しい触覚の技術をみなさんにお見せする展示会や、触ることに親しむワークショップを行っています。

僕が資生堂に勤めていたとき、だいたい二年強、傳田でんだ光洋さんとお仕事をする機会を得ました。傳田さんは二五年以上、皮膚の研究をされていて、この数年は皮膚感覚についても新しい仮説を提唱されています。それだけでなく、文学にもアートにも造詣が深い方です。

阿部公彦さんとはじめてお会いしたのは、阿部公彦さんがメンバーとなっている「飯田橋文学会」のイベントで、谷川俊太郎さんがゲストでいらっしゃったときでした。そのあと、上梓じょうしした『触楽入門』をお送りしましたところ、ツイッターで感想を書いてくださって感激しました。阿部さんは傳田さんの『皮膚感覚と人間のこころ』についても、紀伊國屋の書評サイト「書評空間」にてお書きになられていて、でしたら大胆にもこのお二人をお呼びしてお話ししたら面白いのではないかと思いまして、この会を開催する運びとなりました。

好評発売中
テクタイル著 『触楽入門』
3刷で帯を新しくしました!

11.08.2017

南國科學通信 第1回

全卓樹
第1回

高知工科大学で理論物理学の研究をしている全卓樹さんに、自然界の様々な階層を旅する科学エッセイを連載していただきます。月に二度、十五分だけ日常を離れ、自然の世界をのぞいてみませんか?(編集部)


海辺にたたずんで、寄せては返す波の響きをきいていると、「永遠」という言葉が心に浮かぶ。


"Cabin of the Customs Watch" by Claude Monet, 1882. (Metropolitan Museum of Art)


死と静止はおそらくは永遠の安らぎではない。死してのちも万物が色せ崩れゆき、世界が無慈悲に年老いていくことを、熱力学の第二法則は命ずるのだ。永遠の喩えとされるダイヤモンドの輝きも、決して永遠ではない。ダイヤモンドは、30億年前に高温高圧のマグマの中で作られて以来、再び作り出されることはなく、何十億年ののちすべて灰として散っていくことだろう。

むしろ絶えず巡りきて繰り返すもの、周回し回帰するものの中にこそ、永遠はあるのではないか。満ち潮引き潮の繰り返し、太古から変わることなく同じリズムを刻む昼と夜の交代や月の満ち欠け、そのような永劫えいごうに回帰する運動の中にこそ、永遠が見出されるはずである。

7.28.2017

加藤陽子さんブックフェア

「過去を正確に描くことで未来をつくるお手伝いができる。それが歴史学の強みです」歴史学者の加藤陽子さんが、いま、読んでほしい本、20冊を選びました。「戦争が平場に降りてきた時代を生きる」選書フェアを開催いただいている書店さんでは、各書籍への加藤陽子さんのコメントの入った小冊子も配布しています。末尾に掲載しているフェア開催書店さんで、ぜひお手に取ってみてください。(編集部)

「寓話は、今この瞬間に起こっている戦争には無力であるが、永遠に起こりつづけるかも知れない戦争というものに呼びかける力はある」とは、敬愛する劇作家・野田秀樹の言葉です。

冒頭の「寓話」の二文字には、「歴史」あるいは「学問」など代入可能でしょう。

約140億年前にできたこの宇宙の中に、約46億年前に生まれたこの地球の上で、約20万年前に誕生した我らが祖先、その伝来の知恵を総動員し、地球が廃墟と化すのを押しとどめる時期に今や我らは到達したのではないかと思います。

後から振り返り、正真正銘の「危機の時代」だったと総括される時代が、素知らぬ顔をして脇腹を通り過ぎてゆく時の感覚、その感覚を体感できる本を選んでみました。
――加藤陽子